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愛着障がいって?【発達障がい・学習塾】ふぉるすりーるブログ 2020/1/11②

愛着障害とは

親などの特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことで現れる困難の総称です。愛着障害については医学・心理学で様々な考え方があり、定まった定義などがない状況です。しかしなんらかの対人関係や社会性に困難がある大人の中に、その原因が愛着形成に問題があるのではないかと考える人も少なくないようです。愛着形成に課題があるとはどういうことなのか、大人の「愛着障害」に対処する方法についても解説します。

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愛着障害」とは、主たる養育者との適切な愛着関係が形成できなかったことによる障害の総称として用いられる心理学用語です。医学・心理学で様々な定義や考え方があり、用語の使い方として正確なコンセンサスがないというのが実情です。
 
 
愛着(アタッチメント)とは
そもそも「愛着(アタッチメント)」とは、イギリスの精神科医ボウルビィが提唱した概念で「特定の人に対する情緒的なきずな」のことです。
 
乳幼児は特定の養育者によって繰り返し行われる世話によって、特定の人と一対一で、気持ちの面で互いに結ばれます。例えば赤ちゃんが「お腹が空いた」「オムツが濡れて気持ち悪い」などと訴えて泣くと親や日常的に世話をしてくれる特定の大人が世話をしてくれます。生理的欲求を訴え満たされる、その繰り返しによってその特定の人と心理的な信頼関係やきずなが生まれます。これが他者とのコニュミニケーションの第一歩となり、こうしてできた愛着関係を基盤に自立心、ひいては人間関係や社会性の発達につながります。これが心理学における愛着理論です。
 
愛着(アタッチメント)は人間が生まれながらに備えているわけではなく、成長の過程で周りの人との関わりを通じて獲得していくものです。そのため、特に幼少期に不適切な環境や関わりなどによってうまく愛着関係が形成できないことで、その後の人間関係や社会性の発達に困難が現れるケースがある、というのが愛着理論における愛着障害の考え方です。
 
 
大人の愛着障害とは
愛着障害は主に子どもについて研究が進められています。成人を対象にした研究は少なく、十分なエビデンスはまだないのが実情です。
 
しかし、なんらかの対人関係や社会性に困難がある大人の中に、その原因が愛着形成にあるのではないかと考える人も少なくないようです。
 
気持ちのつながりをうまく結べずに人とバランスのとれた関係性がつくれなかったり、心が不安定になったり、ストレスが身体に出やすかったりといった、社会性や対人関係に困難のある状態を、過去の不適切な親子関係や養育に起因し、大人になってもその家族関係や困難が続いていると考えているケースを「大人の愛着障害」と呼んでいる場合があるようです。
 
 
医学的に診断される大人はまれだが、愛着障害ではないかと悩む人は多い
一方、医学的な診断としてはアメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』の「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」が挙げられますが、その定義と診断基準に当てはまり医療機関で診断される大人はまれであることも理解しておきましょう。
 
この記事では愛着障害の医学的な診断・定義についてもご紹介しつつ、「愛着形成に課題がある」と感じる大人がどのように対処していけばよいのかについて解説します。
 
 
医学的な愛着障害の定義
 
 
出典:amanaimages
 
広義では、対人関係の不器用さや心の不安定さがあり、その原因が愛着の問題にあると思われる人を広く指す愛着障害ですが、医学的に定義される愛着障害はかなり限定的です。
 
例えば『DSM-5』での診断名としては、子どもに起きる「反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)」と、「脱抑制性対人交流障害」の2つがあります。いずれもネグレクトや主たる養育者の頻繁な変更があったか、アタッチメント形成が極端に制限される環境だったかなど、養育の極端な様式を経験しているかどうかが診断基準になっています。
 
小児期を中心にした疾患概念ですが、また発達過程において愛着(アタッチメント)が通常形成される9ヶ月頃より前には診断されません。発達障害と似ている症状もあるため、慎重に鑑別・診断されます。
 
それぞれの特徴をご紹介します。
 
反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
反応性愛着障害のある子どもは、人に頼ることが苦手です。つらいことがあっても周囲の大人にうまく頼れません。
 
彼らは,苦痛を感じたときに,養育者から安楽,支え,愛情を込めた養育,または保護を得るための一貫した努力を示さない.さらに,苦痛を感じたとき,この障害をもつ子どもは,養育者の安楽を与えようとする努力に対し最小限にしか反応しない. …… このように,反応性アタッチメント障害をもつ子どもは,養育者との日常的な交流の中で陽性の情動の表出の減少または欠如を示す.
 
この症状はしばしば自閉症スペクトラムASD)のある子どもにも見られる症状のためASDと鑑別が必要となります。また、社会的ネグレクト、主たる養育者の頻回な変更、普通でない状況における養育など、その子が不十分な養育の極端な様式を経験しているかどうかも基準となります。
 
脱抑制性型対人交流障害
逆に、脱抑制性愛着障害のある子どもは、初対面の人にも人見知りせずにべったり抱きつくなど、状況にそぐわないなれなれしい言動に出ることもあります。
ICD-10では「脱抑制性愛着障害」という名称です。
 
脱抑制型対人交流障害の基本的な特徴は,ほとんど初対面の人への文化的に不適切で過度の馴れ馴れしさを含む行動の様式である
 
症状はADHDと間違われやすい症状で、鑑別が必要です。また、こちらも社会的ネグレクト、主たる養育者の頻回な変更、普通でない状況における養育など、その子が不十分な養育の極端な様式を経験しているかどうかも基準となります。
 
 
「反応性愛着障害」のある子どもに見られる特徴・困りごと
 
 
出典:amanaimages
 
反応性愛着障害のある子どもは、人に頼ることが苦手です。つらいことがあっても周囲の大人にうまく頼れません。
 
逆に、脱抑制性愛着障害のある子どもは、初対面の人にも人見知りせずにべったり抱きつくなど、状況にそぐわないなれなれしい言動に出ることもあります。
 
つまり、愛着障害のある子どもは、人との関係の作り方が、頼れないか、誰彼かまわず頼ってしまうかの両極端になってしまう傾向があるといえます。
 
  • 理由もなく怯えたり、落ち込んだり、イライラしたりする
  • よく眠れなかったり、食欲がなかったりする
  • 身体が平均より小さい(体重が軽い、身長が小さい)
  • 風邪をひきやすい、胃腸が弱いなど、体調を崩しがち
  • 発達障害のある子どもに似た言動をする場合がある(言葉が出ない、常同行動、多動、片づけられない、危険な行動に出る、モノに執着する、季節感に合わない服を着たがるなど)
  • 自分を傷つけるような行動に出る場合がある(頭を壁に打ちつける、身体をかきむしる、髪を抜く、爪をかじるなど)
  • モノや人を噛んだり叩いたりする
  • 大人の反応を試すような行動に出る(わざと悪いことをする、痛みを大げさにアピールするなど)
  • 嘘をつく、謝れない
  • 自己評価が低い(挑戦したがらない、失敗するとパニックを起こす、「どうせ私なんて」などの言葉が多い)
 
 
愛着形成に課題があると感じる大人の困難
 
 
出典:amanaimages
 
「反応性愛着障害」として医学的に診断を受ける大人はあまりいないかもしれません。しかし以下のような困難や生きづらさの当事者で、その背景を幼少期の養育や愛着(アタッチメント)形成のなんらかの不全にあるのではないかと考える人もいます。
 
  • 安定した人間関係を築くことに不器用さがあり、結果的に仕事やプライベートでトラブルを抱えやすい
  • 精神疾患を発症しやすく、発症した場合、重くなったり長引いたりしやすい
  • 感情のコントロールに困難を抱えている
  • 自分を肯定的に見ることが苦手
  • 「全か無か」思考になりやすい
  • 微熱や胃腸の症状が続く、疲れやすいなどの自律神経系のアンバランスがある
  • 自分の生理的欲求(空腹など)がわかりにくいことがある
  • 発達障害と似た症状がみられることがある
 
 
愛着障害かな?と思ったら
 
 
出典:amanaimages
 
昨今、「愛着障害」という言葉が心理学用語として、またそこから発生する俗称として使われることも多くなってきました。愛着形成に課題があるのではないかと感じる人は、実生活の中での、ある程度以上親密な相手との関係性の問題を抱えている場合が多いようです。
 
子どもの愛着障害については、保育や教育などの現場で問題意識が普及しつつありますが、大人の愛着障害に関する研究はまだ発展途上で医学的にも確立された疾患ではありません。精神科医やカウンセラーなどの専門家であっても、表面に出ている精神疾患の症状とともに、愛着の問題にも対応できるケースはそれほど多くはありません。
 
そのような事情から、成人に正式に愛着障害の医学的な診断がつくことはまれであると考えられます。しかし、その困りごとや症状に、その人の抱える人間関係の悩みや困難、発達障害、他の精神疾患の合併などが隠れている可能性もあります。
 
本当につらい時、悩んでいる時は、医療機関に相談してみましょう。精神科や心療内科、カウンセリング機関だけでなく、まずはかかりつけの内科でもいいので、相談してみましょう。大事なのは、毎日の生活を少しでも楽にすることと、役に立つ治療や情報とつながることです。
 
 
大人の愛着形成の課題への対処法
 
 
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愛着形成に課題があるのではないか、自分は愛着障害があるのではないかと思った場合、自分でできる対処法にはどんなことがあるのでしょうか?
 
 
課題や困りごとを整理して具体化する
困りごとの背景や要因は様々です。振り返ること、考えてみることで課題が整理され明確になります。
 
  • どんな時、どんなことに困っているのか
  • その背景にはどんなことやどんな気持ちがあるのか
 
具体的にすることで対処法が見つけやすくなります。
 
 
頼れる心理的な安全基地をつくる
不安な気持ちや満たされない気持ちなどの気持ちの問題がある場合、心理的な安全基地をつくることを意識してみましょう。安全基地とは、いざという時に頼ったり居場所となるところを指します。頼り先や居場所は一つだけではなくても大丈夫です。また家族や友人、カウンセラーなどリアルな人間関係だけでなく、本やネット、趣味などでもよいので、どんなところが自分が安心して過ごし、頼れるかを考えてみましょう。
 
  • つらい時にサポートを求められる人をつくる
  • 自分が好きなこと、リラックスできることをつくる
  • 自分が居心地のよい場所や人間関係を探す
 
こうした自分の基盤となるものや安心できる関係をつくっていくことで、次第に他のコミュニケーションや人間関係も安定していく場合も少なくありません。
 
 
コミュニケーションの課題への対処法
困りごとがコミュニケーションスキルや現状の人間関係にあると感じる場合も、そのスキルに対しての対処法を考えてみましょう。「適切な距離感で接することが難しい」、「どうやってコミュニケーションをとったらよいかわからない」「コミュニケーションをとっても満たされない」などどんな困難さがあるのかを考え、課題を明確にしてみましょう。その背景にはどんな要因があるのか具体的に考え、コミュニケーションがスムーズにいく方法を考えてみましょう。
 
一方で、コミュニケーションに気をつかいすぎると疲れてしまい、余計に苦手意識を持ってしまう場合もあります。ある程度割り切る方が他人との間に適度な距離が生まれ、かえってうまくいくかもしれません。
 
  • 付き合いがつらい時には距離を置く
  • うまく話せない時は聞き役に徹して雑談をうまくやり過ごす
 
など負担が大きくなりすぎないようにすることも大切です。
 
まとめ
 
 
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愛着障害」として成人に医学的な診断がつくケースはごく限定的です。ですが、愛着関係の形成は、コミュニケーションの基礎になる部分でもあり、一人ひとりの経験を通じて獲得していきます。そのため、愛着形成に課題を感じている人は、過去の家族関係へのネガティブな気持ちや困難さをより強く感じてしまう場合もあるのではないでしょうか。そして原因は、複雑に絡み合っていて、なかなか解明できない、あるいは解決できないかもしれません。
 
そんな時は、過去に原因を探し求めるだけではなく、自分の今の困りごとはどんなことか、対処法としてどんなことができるのかを考えてみましょう。重要なのは、今困っていることに対して対処法を試し、うまくいく方法を探すことです。同時に頼り先を増やしたり、好きなことに目を向けるなどして自分の心理的な安全基地を少しずつつくっていけるとよいでしょう。
 
一方でその背景に発達障害精神疾患などが隠れているケースもあります。つらいと感じた場合には、一人で抱え込まずに医療機関や相談機関などの専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
 
参考文献
米澤 好史「発達障害・愛着障害 現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする 『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム」
米澤 好史、本郷 一夫「愛着関係の発達の理論と支援」
岡田 尊司「愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書) 」
米澤 好史「やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる」
岡田 尊司「愛着アプローチ 医学モデルを超える新しい回復法 (角川選書)」
山下 洋「思春期問題の背景にある愛着障害について」